【組織診断08】動物病院の朝令暮改はなぜ嫌われるのか?方針転換の「理由」を伝えないリスクと解決策

 

一般的に、リーダーの指示は一貫していることが望ましいとされています。

 

 「一度決めたことは最後までやり遂げるべきだ」

 

 「方針がブレるとスタッフが混乱し、信頼を失う」 

 

ビジネス書やセミナーでは、朝令暮改を避け、一貫性のあるマネジメントを行うことが正解とされています。 

 

明確なビジョンを掲げ、揺るぎないリーダーシップを発揮することが、強い組織を作る条件であるという理論です。

 

昨日の「正解」が今日の「間違い」に変わる診察室の疲弊

 

昨日まで「この検査は必須だ」と言っていた院長が、今日は「いや、それは無駄だ」と一蹴する。

 

カルテを準備していた看護師の指が止まる。

 

スタッフたちは目配せをし、小さなため息をつく。

 

「結局、何が正しいんですか?」

 

その言葉は、誰にも届かぬまま飲み込まれます。

 

院長が良かれと思って下した「最新の判断」が、現場ではただの「気まぐれ」として処理される瞬間です。

 

納得感を仕組み化する「背景の共有」と関係性の健全化

 

院長も最初から黙っていたわけではないと思います。

 

むしろ、かつては丁寧に説明し、対話を試みたはずです。 

 

でも、院長の意図は伝わらず、何度も説明を繰り返すうちに「言っても無駄だ」と諦めに至った。 

 

その諦めが、現在の「理由なき朝令暮改」を招いていると思います。

 

 

こうした状況の解決策は、教育ではなく「院長自身の工数削減」のための仕組み化です。

 

第一に、症例共有や引き継ぎにおける「判断基準の記録」です。 

 

スタッフの理解力に期待するのを一旦止めてください。 

 

「なぜAからBに変えたか」を、自身の備忘録として残し、それをスタッフに閲覧させる。 

 

説明するのではなく、院長の思考の跡を「物理的に置く」ことで、情報の非対称性を埋めます。

 

 

第二に、関係性を「教育」ではなく「役割の分担」として再定義することです。 

 

スタッフを「教える対象」と見ると、理解されないことにイライラします。 

 

でも、彼らを「院長の指示を遂行する役割」と定義するなら、背景を伝えないのは「仕様書のない発注」と同じです。 

 

思いやりは不要です。自身の指示を正確に遂行させるための「業務指示」として背景を添えてください。

 

 

こういったコミュニケーション不足の本質的な問題は、スタッフの能力ではなくて、院長が「伝えることを放棄した」ことによる関係性の負債です。 

 

スタッフに伝わらない、無能だと決めつけた瞬間から、組織の自浄作用は止まります。

 

動物病院の朝令暮改を「進化」に変えるために、今日からできる一歩

 

指示を出すだけでスタッフが動くと思うのは、もう終わりにしましょう。

 

朝の診療前、昼の休診時間、そして午後の診療後。 

 

スタッフが診察以外の時間で、具体的にどんな業務に追われ、どんな苦労をしているか。 

 

まずはそこに、意識的に目を向けることから始めてください。 

 

「理解できない相手」と切り捨てる前に、彼らが守っている「現場の現実」を知ること。 

 

関係性の赤字を解消しない限り、どんな立派な仕組みも機能しません。